看護師国家試験対策/知っておきたい制度改正・新制度(第6回)

 平成22年版保健師助産師看護師国家試験出題基準(以下「出題基準」と略)にかかわることして、同21年11月後半から12月末において新たな法制化があったり、厚生労働省から新しい調査結果が公表されました。それらのうち、以下の4項目について説明します。

  【1】肝炎対策基本法の制定・公布
  【2】「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」
    の制定・公布
  【3】平成20年患者調査の概況
  【4】平成20年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
    に基づく対応状況等に関する調査結果

肝炎対策基本法
 わが国ではB型肝炎、C型肝炎の感染者が約355万人いると推定され、国内最大級の感染症となっているといわれていて、それを放置すると肝硬変や肝がんに移行する恐れがあります。そのように多くの感染が起こった背景あるいは主要な経路として、

●かつて集団予防接種の際に注射器を連続使用したこと
●一部の血液凝固因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入することで薬害肝炎事件が起こったこと

などがあり、これらについては国の責任が追及されるとともに、近年、国レベルでの肝炎対策が大きな課題となっていました。こうして、平成21年の臨時国会において全会一致の形で肝炎対策基本法が成立し、同年12月4日に公布、平成22年1月1日から施行されます。
肝炎対策基本法は、出題基準の大項目「主要疾患と看護」、中項目「感染症」、小項目「ウイルス性肝炎」、あるいは大項目「疾病に対する医療」、中項目「医療による健康被害」、小項目「ウイルス性肝炎」などに直接的にかかわる新しい法律であるといえます。この肝炎対策基本法のポイントは次のとおりです。
 
 

(1)

法律の目的は、肝炎対策に関して基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師などの責務を明らかにし、肝炎対策を総合的に推進すること。

(2) 居住地域にかかわらず、肝炎の検査や適切な医療が受けられるようにする。
(3) 政府は、肝炎対策を実施するために必要な法制上または財政上の措置を講じる。
(4) 厚生労働大臣は、肝炎対策基本指針を策定する。また、その策定に当たっては、肝炎患者・家族または遺族を代表する者、肝炎医療に従事する者、学識経験者などで構成する肝炎対策推進協議会(委員20人以内)の意見を聞くものとする。
(5) 国、地方公共団体は、肝炎患者が適切な医療を受けられるように、経済的な負担を軽減するための措置を講ずる。
   なお、肝炎対策基本法が目指している仕組みは、がん対策基本法とかなり共通するところがあります。がん対策基本法に目を通しておくと、肝炎対策基本法の理解も進みます。  
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法
   「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」が、肝炎対策基本法(前述)と同時に臨時国会で制定され、平成21年12月4日に公布・施行されました。これは、出題基準の大項目「疾病に対する医療」、中項目「医療による健康被害」、あるいは大項目「主要疾患と看護」、中項目「感染症」、小項目「インフルエンザ」にかかわる法律といえます。
この「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」のポイントは次のとおりです。
 

(1)

この法律でいう「新型インフルエンザ」とは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の規定により厚生労働大臣が平成21年4月28日にその発生に係る情報を公表したもの。つまり、現在流行している「新型インフルエンザ」を指していて、将来に発生が予想される新型のインフルエンザは含んでいない。

(2) 新型インフルエンザ予防接種を受けた人に健康被害が生じ、障害の状態となったり、死亡した場合は、予防接種法の二類疾病(インフルエンザ)の定期接種と同様の救済措置を講じる。ちなみに、予防接種法における一類疾病とはジフテリア、百日せき、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻しん、風しん、日本脳炎、破傷風、結核などで、その対象者は予防接種を受けるようにする努力義務がある。また、二類疾病とは、個人予防目的に比重を置いた疾病で、現在のところはインフルエンザだけであり、予防接種を受ける努力義務の規定はない。
(3) 輸入ワクチン(特例承認を受けた新型インフルエンザワクチン)の使用による健康被害の賠償などで生じた製造販売業者の損失を、政府が補償する。
平成20年患者調査の概況
 

 厚生労働省は平成21年12月3日、平成20年患者調査の概況を公表しました。同調査は3年ごとに実施しているもので、出題基準の大項目「健康に関する指標」、中項目「健康状態と受療状況」ほか、さまざまな項目にかかわるデータがまとめられています。同調査は、病院の場合は平成20 年10 月21 〜23 日の3 日間のうちで指定した1日、診療所の場合は同10 月21〜22 日と同月24 日のうちで指定した1 日に、実施しています。ちなみに、診療所では10月23日が調査の対象となっていないのは、この日が木曜日で、休診が比較的多いためです。
平成20年患者調査は、以下の点について、平成20年10月の状況をまとめています。

▽推計患者数
▽受療率
▽退院患者の平均在院日数
▽入院前の場所・退院後の行き先
▽主要な傷病の総患者数

それらの概要は次のとおりです。

 
 

(1)

平成20年10月の調査日において全国の医療施設で受療した推計患者数は、「入院」が139万2,400人、「外来」が686万5,000人。3年前の前回調査(平成17年患者調査)と比べると、「入院」が4.8%減、「外来」が3.2%減となるなど、患者が減る傾向をみせている。

(2) 全国の受療率(人口10万対)は、「入院」が1,090(平成17年比55減)、「外来」が5,376(同175減)である。上記(1)を反映し、受療率も低下傾向を示している。

(3)

平成20 年9 月中に退院した推計患者における平均在院日数は、「病院」が37.4 日(同1.8日減)、「一般診療所」が18.5 日(同3.1日減)となっている。このように、病院においては近年、平均在院日数が短縮する傾向が続いている。ちなみに、ここでいう「病院」にはさまざまなタイプを含んでおり、急性期を中心とした病院であれば在院日数はもっと短かい。
(4) 推計退院患者における入院前の場所は、「家庭」が89.8%。また、その退院後の行き先は「家庭」が85.2%、「他の病院・診療所」が5.4%。なお、そのほかの行き先として「介護老人保健施設」(1.4%)、「介護老人福祉施設」(1.1%)、「社会福祉施設」(0.5%)などもあり、退院調整にかかわる看護職は、福祉・介護関係の知識も求められる。
(5) 主要な傷病の総患者数は、高血圧性疾患が796万7,000人(平成17年調査比15万8,000人増)、糖尿病が237万1,000人(同9万8,000人減)、悪性新生物(がん)が151万8,000人(同9万5,000人増)、脳血管疾患が133万9,000人(同2万6,000人減)、などとなっている。
   なお、平成20年患者調査の概況は厚生労働省のホームページ(下記アドレス)で公開されており、一度、目を通しておくとよいでしょう。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/08/index.html
 
平成20年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果
  厚生労働省は平成21年11月20日、「平成20年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」を公表しました。これは、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)に基づいて、全国の市町村や都道府県が高齢者虐待にどう対応しているか、調査したものです。また、そこには、出題基準の大項目「老年看護の基本的考え方と課題」、中項目「老年看護における倫理的課題」、小項目「高齢者虐待と関連法規」に直接的にかかわるデータが出ています。そのポイントは、次のとおりです。  
 

(1)

養介護施設従事者等(老健施設や特養など介護保険施設、居宅サービスなど養介護事業の業務に従事する者)による高齢者虐待として平成20年度に相談・通報があったのは451件で、前年度より19.0%増加している。その虐待の種類としては「身体的虐待」(74.3%)、「心理的虐待」(30.0%)が主なもの。また、その相談・通報者は「家族・親族」、「当該施設職員」が中心である。

(2) 養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人など)による高齢者虐待として平成20年度に相談・通報があったのは2万1,692件で、前年度よりも8.6%増加している。その虐待の種類としては「身体的虐待」(63.6%)、「心理的虐待」(38.0%)、「介護等放棄」(27.0%)、「経済的虐待」(25.7%)などが比較的多く、前述の養介護施設と比べると、「経済的虐待」が加わっているのが特徴。また、その相談・通報者は、「介護支援専門員等」(ケアマネジャー等)が43.8%と最も多く、以下、「家族・親族」(13.3%)、「被虐待高齢者本人」(11.8%)などとなっている。
   そのように高齢者虐待の相談・通報が増えているのには、高齢者虐待防止法が施行3年目に入り、事業者や住民にその理解が進んだという背景がある、と見られています。
  なお、「平成20年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」は厚生労働省のホームページ(下記アドレス)で公開されており、一度、目を通しておくとよいでしょう。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000002mce.html
 
  2010.1.04
医療ジャーナリスト 牧 潤二
看護師就職ニュース

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