がん研究会有明病院は、がんの専門病院です。急性期病院として年間約8,000件以上の手術実績があり、化学療法や放射線療法などで多数の治療を行っています。その一方で、痛みのコントロールや、看取りを含めたがん看護もしっかりと実践しており、がんに関するあらゆる段階の看護を学ぶことができます。院内の雰囲気は、とても静かで穏やかです。看護師は走ることなく、患者さんが声をかけやすい雰囲気であるように心掛けています。また患者さんと話すときには、腰を落として目線を合わせる姿が院内のあちらこちらで見受けられます。病棟の廊下には見晴らしと日当たりのいい場所があり、患者さんをベッドごと移動したり車イスでお連れして、足浴や爪切りなどのケアを行ったり、お話をしたりすることがあります。こういったことに象徴されるがん看護が、先輩看護師から新人看護師へと自然に受け継がれている病院です。
当院はがん専門病院のため、新人看護師の教育が十分に行えないのではないかと思われがちですが、そのようなことは決してありません。キャリアラダーをはじめとする教育プログラムに沿って、看護職の根幹となる知識や技術をしっかりと学ぶことができます。さらに学び続けたい人には、当院に多数在籍している専門・認定看護師が講師となり、がん領域の専門看護コース(疼痛看護、化学療法看護、放射線療法看護など)を年4〜5回、実施しています。このほか最新のトピックスを取り上げたテーマ別研修もあり、周術期管理、口腔ケア、集中領域の心電図の読み方、レントゲンの読み方などの研修が人気です。高齢のがん患者さんには、不整脈などの循環器疾患、糖尿病などの代謝性疾患を合併している方が少なくありません。これらのがん以外の看護を学びたい場合には、国立大学病院に2年間出向する人事交流制度もあります。
看護職は自分の成長につながる仕事です。患者さんやご家族と向き合い、しばしば自身の人間性を試されていると感じることもありますが、そこで悩みながらも「もっと患者さんのために工夫できることはないか」「もうひとがんばりしてみよう」と考え続けられる人であってほしいと思います。看護技術は経験によって身につきますが、看護にゴールはありません。また、患者さんの意志決定を支えるためには、ご本人がどのような生活をしたいのか、どのような治療を受けたいのかを、伴走しながらいっしょに考えることが大切です。がんは必ずしも死に至る病気ではなくなりましたが、ある程度リミットを意識しながら患者さんに声をかけ、意志決定を支える働きかけが求められます。当院は、このような様々な看護の本質を学べる環境なので、新人看護師が学ぶためのよい環境だと思います。