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ナースの「お給料事情」

医師が高給であることはよく知られています。一方、ナースも高給というイメージが強い職業の1つです。では実際にナースの皆さんがいくらもらえているのか、詳しくみていきましょう。

ひと言に「病院」といっても国立、公立、公的、民間があります。またナースの就職先としては、クリニックなどの一般診療所などもあり、それぞれ経営する母体によって給料は異なってきます。ここでは主に「病院」給料の中身について、紹介していきます。また、「特殊業務手当」「寒冷地手当」「専門看護手当(専門看護師手当・認定看護師手当)」など、病院から支給される手当は、初めて社会人になる皆さんにとって、聞き慣れないものが多いはずです。誰がもらえて、その額はどの程度のものなのか、徹底検証します。

民間病院の給料の差は大きい

日本の病院は全国に8,389病院(平成30年3月末)あり、民間病院と公的病院の2つに大きく分けられます。さらに公的病院は、国が支援する国立病院、都道府県などの行政が運営する公立病院、日本赤十字社や済生会などが運営する公的病院の3つに分類されます。民間病院とは個人や医療法人が運営する病院で、全体の約80.2%を占めています。

それぞれの病院ごとに新卒ナースの給与総額を表1に示しました。この表で注目したいところは、「民間(とくに医療法人や個人)は給料の差が激しく、国立・公立は差が比較的少ない」という点です。専門学校卒の1年目では、最も高い病院では290,046円で、最も低い病院では237,600円となっています。同じ1年目のナースでありながら、年間で629,352円(差額52,446円×12か月)の差が生じています。賞与(ボーナス)を含めるとその差がさらに大きくなると思います。

「民間病院のお給料は高い」とよくいわれますが、それは夜勤手当で補っているものだと思います。ですから、公務員とは違い、勤務先によって大きな差が出てくるのが特徴です。また病床数によっても差があり、99床以下の病院と500床以上の病院では、専門学校卒の場合では平均で12,761円もの開きがありました。

ちなみに、日本看護協会の調査によると役職者にキャリアアップした場合の基本給の平均は、副院長(専任)では655,071円、副院長(看護部長兼任)では526,212円、看護部長専任では427,573円、副看護部長では約405,373円、看護師長では370,949円、副看護師長では350,882円、主任では327,143万円でした(2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書)。

※平均税込給与総額:通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当を含む。夜勤は当該月に3交代で夜勤8回(2交代で夜勤4回)したものとする。時間外勤務手当は除く。

表1:病院別月収(税込み給与総額)一覧

※平均税込給与総額:通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当を含む。夜勤は当該月に3交代で夜勤8回(2交代で夜勤4回)したものとする。時間外勤務手当は除く。
※最高、最低:統計グラフ「箱ひげ図」による75%点を最高額、25%点を最低額とした。

日本看護協会(2018年病院における看護職員需給状況調査、日本看護協会)

公立病院は、全国ほぼ横並びの給料、全体では・・・

地方公務員給与実態調査(2018年、総務省)によると、公立病院における全国の新卒ナースの初任給の基本給月額の平均は、短大卒(3年課程)で203,981円でした(表2)。 「地方公務員」として雇用される公立病院のナースは、全国どこで働いても給料に大きな違いはありません。表2は新人ナースの都道府県別の初任給(基本給)のデータです。

全国平均は203,981円です。日本医療労働組合連合会が報告(2017年度)している看護師のモデル賃金200,371円となっています。

都道府県別にみて、初任給が最も高かったのは千葉県と奈良県の211,900円。最も低いのは北海道の197,100円となっています(秋田県は回答なし)。

都道府県別初任給(短大3年)

地域格差を是正する手当が目立つ公立病院

「地方公務員」として雇用される公立病院のナースは、全国どこでもほぼ同じ手当てが支給されます。前述の「地方公務員給与等実態調査」に記載されている手当の種類をみてみると、「扶養手当」「住居手当」「通勤手当」などのほか、「寒冷地手当」や「地域手当」といった手当もあります。

「寒冷地手当」とは文字通り、寒さの厳しい雪国で支給される手当です。「暖房費だけでなく、雪国はお金がかかります。車は割高な寒冷地仕様で、冬タイヤ(スタッドレス)に夏タイヤ(ノーマル)、冬靴に夏靴、厚手のコートなどが必要です」(北海道での勤務経験のあるナースAさん)

このように雪国の生活では、想像以上にお金がかかるため、寒冷地手当が不可欠です。具体的な支給地域は1級地から4級地に分けられ、北海道が1〜3級地になっており、青森県以南の東北地方や信越地方などの寒冷地域が4級地に区分されている。毎年11月から翌年3月まで支払われるもので、旭川市や北見市などの1級地で、世帯主で扶養親族のある場合では月額最高26,380円(年額131,900円)になります。

「地域手当」とは、地域の民間賃金水準を適切に反映するため、「物価水準の差異によって、必要な生活比が異なることを配慮した賃金」のことで、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給されます。東京都特別区が最も高く、〔給料の月額+特別調整額(管理職手当)+扶養手当〕×20%、次いで、茨城県取手市や大阪市などの20都市が16%、以下1%刻みで最も低いのは3%で3都市となっています。このように、公立病院で働くナースの給料は、働く地域に・地方による格差を是正される仕組みが整備されているのです。

「俸給表」という全国一律の給与体系の国立病院や赤十字病院

国立病院で働く人ナースは、自動的に国家公務員(正確には準公務員)になり、その給料は、「独立行政法人国立病院機構職員給与規定」にある「俸給表」のなかの「医療職基本給表(三)」によって定められています。
さらにナースの等級は、「准看護師」は1級、「保健師・助産師・看護師」は2級、「各師長」は3級と規定されています。したがって、大学卒業のナースの1年目は「2級9号俸」、短期大学・看護専門学校を卒業(短大3卒)したナースは「2級5号俸」、2年過程の看護専門学校を卒業(短大2卒)したナースは、「2級1号俸」になります。

看護部長や看護師長などの役職に就くと「級」が上がり、勤務年数に応じて「号」が上がります。「級」や「号」が上がるにつれて、給料も増えていく仕組みになっています。現在の初任給(基本給)は、大卒で206,400円、短大3卒で197,100円、短大2卒で188,800円となっています(平成30年3月現在)。年齢や階級、地域手当などによってお給料の差が出てきますが、民間病院のような差が出てこないのが特徴です。

全国には、日本赤十字社が運営している92の病院があります。日本赤十字社の給与規定は、国家公務員の俸給表を参考したものです。基本給は大卒で211,900円、短大3卒で206,400円、短大2卒で197,100円となります。

国家公務員共済組合連合会が運営する病院は全国に35病院があり、こちらも国家公務員の俸給に準じています。浜の町病院(福岡県)では、基本給は大卒で206,300円、短大3卒で194.200円、短大2卒で185.900円となっています(2016年4月現在、地域や病院よって違いはあります)。

手当の種類が多くて全国一律の支給額が魅力の国立病院

表3は、国立病院機構で働くナースに支給される主な手当と金額の一覧です。「地域手当」や「住居手当」をはじめ、「専門看護師手当」「認定看護師手当」「救急呼出待機手当」「ヘリコプター搭乗救急医療手当」など、手当の種類が多い点が特徴です。「地域手当」や「寒冷地手当」などを除けば、支給される金額は全国一律となっています。

また、大学院の修士課程を修了し、厚生労働省の「看護師特定行為・業務試行事業」の対象となる行為・業務を行う看護師長や副看護師長、助産師または看護師には月額60,000円の手当がつきます。

国立病院機構東海近畿グループが紹介しているモデルケースをみてみましょう。基本給および諸手当〔三交替制、夜勤月8回、地域手当、民間アパート家賃55,000円の場合の住居手当、通勤距離5kmの場合の通勤手当を含む(時間外勤務手当は、別途支給)〕のケースでは、大卒では277,000〜310,000円、短大3卒では268,000〜299,000円となります。病院によって違いはありますが、ひとつの目安といってよいでしょう。

表3:国立病院に勤務するナースの諸手当

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