看護師国家試験対策/知っておきたい制度改正・新制度(第7回)

 平成21年12月後半から22年1月にかけて、平成22年版保健師助産師看護師国家試験出題基準(以下「出題基準」と略)に関連する政令の公布、通知の発出、調査結果の公表が行われています。今回は、それらのうち、以下4項目について説明します。

  【1】「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」の通知
  【2】身体障害者福祉法施行令等の一部を改正する政令
  【3】平成20年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
  【4】病院の耐震改修状況調査の結果
在宅酸素療法では火気に注意を
 出題基準の大項目「在宅における医療管理を必要とする人と看護」、中項目「酸素療法」に関して、酸素濃縮装置を使用中の患者において喫煙などが原因と考えられる火災で死亡する事故が発生していることから、厚生労働省は平成22年1月15日、都道府県などの衛生主管部(局)長に対して「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」の通知を発出。在宅酸素療法を受けている患者とその家族などに対して適切な注意喚起が継続的に実施されるように、医療機関への周知と指導を要請しています。  同通知では、在宅酸素療法を受けている患者や家族に対して、次のような説明と注意喚起をすること、としています。
 
 

(1)

高濃度の酸素を吸入中に、たばこ等の火気を近づけるとチューブや衣服等に引火し、重度の火傷、火災の原因となること。

(2) 酸素濃縮装置等の使用中は、装置の周囲2m以内には火気を置かないこと。特に酸素吸入中には、たばこを絶対に吸わないこと。
(3) 火気の取り扱いに注意し、説明書どおりに正しく使用すれば、酸素が原因でチューブや衣服等が燃えたり火災になることはないので、過度に恐れることなく、医師の指示どおりに酸素を吸入すること。
   また、ここで、今回発出された通知というものの位置づけについて再確認しておきましょう。官報で公布(掲載)されるのは法律、法令、省令、告示などであって、「通知」は告示の“下”に位置するため官報には掲載されません。言い換えれば、「通知」は法令ではないので、「通知」自体が法的根拠とはなりません。しかし実際には、厚生労働省ほか中央省庁からは膨大な数の「通知」が発出されていて、関連業界に対する指導などに用いられています。また、そのように通知を出すといった行政上の行為は「通達」と総称されます。  なお、今回の通知は、特に在宅医療にかかわる看護職においては重要な内容で、常に念頭に置いておきたいものです。  
要件を満たす肝機能障害には身体障害者手帳を交付
   出題基準の小項目「身体障害者福祉法」に関して、政府が平成21年12月24日、身体障害者福祉法施行令等の一部を改正する政令(政令第298号)を公布。身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳が交付される障害の範囲に「肝臓の機能の障害」が追加され、今年4月1日から施行されます。これにより、一定の基準を満たす肝機能障害のある人は、身体障害者手帳に基づく種々のサービスが受けられます。また、それは、政府が近年取り組んできた肝炎対策の一環でもあります。  ここで、身体障害者手帳が交付される障害の範囲について整理しておきましょう。  まず、身体障害者福祉法において、身体障害者手帳が交付される障害は、以下の7つである、と規定しています。  

▼視覚障害

▼聴覚、平衡機能の障害

▼音声機能、言語機能、そしゃく機能の障害 ▼肢体不自由
▼心臓機能の障害 ▼腎臓機能の障害
▼呼吸機能の障害  
 また、身体障害者福祉法施行令において、以下の3つを追加しています。  

▼膀胱、直腸の機能障害

▼小腸の機能障害

▼音声機能、言語機能、そしゃく機能の障害  
 ちなみに、政令による追加は、国会の承認(法律本体の改正)は必要なく、政府レベルで決定・実施できます。
  また、それらの障害には1級から7級(4級、6級)までの範囲で等級があり、1級が最も重度なものです。今回、身体障害者手帳を交付する「肝臓の機能の障害」の認定には、

▼肝機能障害の国際的指標であるChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類
▼「日常生活活動の制限等」(3群・10項目からなる表)

という2つの基準が用いられます。例えば、最も軽度である4級については、

(1)Child-Pugh分類の合計点数が10以上の状態が、3カ月以上の間隔をおいた検査で連続して2回以上続く
(2)「日常生活活動の制限等」の1項目以上に該当する

という2つの基準を満たす必要があります。
 ちなみに、最も重度である1級においても、「Child-Pugh分類の合計点数が10以上」といったことが認定基準の一部として用いられています。また、肝臓移植を行った者については、抗免疫療法を必要としなくなるまでは1級に認定されます。
  以上の認定基準を踏まえて(平成22年4月以降)、ここでは、Child-Pugh分類の合計点数が10以上の状態が、3カ月以上の間隔をおいた検査で連続して2回以上続くような症例は身体障害者手帳を交付される可能性が十分にある、と覚えておきましょう。
女性医師が増加――医師・歯科医師・薬剤師調査
   出題基準の大項目「医療機関と医療従事者の職務の機能と役割」に関して、厚生労働省が平成22年12月17日、平成20年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況を公表しました。
  医師・歯科医師・薬剤師調査は2年ごとに実施しているもので、平成20年の同調査は、平成20年12月31日現在での医師、歯科医師、薬剤師の性・年齢・業務の種別、従事場所、診療科名(薬剤師を除く)などについて調べています。我が国に住所があって、医師法、歯科医師法、薬剤師法に基づいて届け出た者が対象となります。
  平成20年医師・歯科医師・薬剤師調査での医師に関するポイントは次のとおりです。

 ▼平成20年12月31日現在における全国の医師数(届出医師数)は28万6,699人で、うち男性が23万4,702人(81.9%)、女性が5万1,997人(18.1%)。2年前(平成18年)の前回調査と比べると、8,772人(3.2%)増加している。
  ▼医療施設(病院・診療所)に従事する医師(老健施設、福祉関係施設、行政などに従事する医師を除く)は27万1,897人で、うち男性が22万2,784人(前回比2.0%増加)、女性は4万9,113人(同8.6%増)で、女性医師の増加の割合が大きい。また、29歳以下で見ると、女性医師が36.1%を占めている。
  ▼診療科名(主たる)別で見ると、産婦人科・産科に従事する医師数が1万389人となり、10年ぶりに増加に転じた。また、病院の産婦人科あるいは産科に従事する医師全体で見ても、すでに1/3が女性である。

  以上のような状況は、医療界において女性医師や看護師が働きやすい環境を作ることが急務となっている、ということを意味しています。
 
病院の耐震化率は56.2%に
   出題基準の大項目「患者の安全・安楽を守る技術」、中項目「療養環境」に関連して、厚生労働省が平成22年1月5日、病院の耐震改修状況調査の結果を公表しました。
  病院の耐震改修状況調査は、平成21年8月末までの各都道府県からの報告に基づき、耐震化の状況をまとめたものです。その耐震化率(すべての建物に耐震性がある病院数/回答病院数)に関する調査結果のポイントは次のとおりです。

 ▼病院の耐震化率は56.2%で、前年(平成20年)調査と比べると5.4ポイント増加、4年前(平成17年)の調査と比べると19.8ポイント増加している。
  ▼災害拠点病院および救命救急センターの耐震化率は62.4%で、前年調査と比べると3.8ポイント増加、4年前の調査と比べると19.1ポイント増加している。ちなみに、政府は、平成22年度までに災害拠点病院および救命救急センターの耐震化率を71.5%とする、という目標を掲げている。
  ▼都道府県別で見ると、東海地震の発生を想定して対策を進めている静岡県の病院の耐震化率は74.7%で、全国でもトップクラスにある。防災意識が耐震化率に反映されている、と見ることができる。

 以上を踏まえて、まだ耐震化を達成していない病院の職員は、震災時にはどうすればよいか、普段からシミュレーションや訓練をしておくことが望まれます。
 
  2010.2.12
医療ジャーナリスト 牧 潤二
看護師就職ニュース