●「チーム医療の推進に関する検討会」で厚労省が提案
厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」(座長=永井良三・東京大学大学院医学研究科教授)は今年2月18日、第10回検討会を開催し、事務局(厚生労働省医政局)から、これまでの議論を踏まえて(1)チーム医療の推進に関する基本的な考え方、(2)看護師の役割の拡大、(3)各医療スタッフ等の役割の拡大、(4)医療スタッフ間の連携の推進――という4つの論点に対する考え方(素案)の提案を受けました。
同検討会が発足したのは、前政権の麻生内閣が昨年6月23日に閣議決定した「経済財政改革の基本方針2009」(骨太の方針2009)で、「医師と看護師等の間の役割分担の見直し(専門看護師の業務拡大等)について、専門家会議で検討を行い、平成21年度中に具体策を取りまとめる」としたことが根拠となっています。その後、同年9月に政権交代が起こりましたが、「民主党政策集INDEX2009」においても「専門的な臨床教育等を受けた看護師等の業務範囲を拡大し、医療行為の一部を分担します」としていました。
ですから、同検討会の名称に「チーム医療」が入っていますが、最も重要な使命は【看護師の業務をどこまで拡大するか】【いわゆるナースプラクティショナーのような職種を日本でも認めるか】――ということについて、一定の結論を出すことなのです。また、政権交代が起こってため、政府・民主党は、日本医師会をはじめとする主要な医療関係団体に対して遠慮する必要もなくなった。そのような背景の下、厚生労働省は、将来の法制化を念頭に置きつつ、比較的侵襲性の高い医行為等を自律的に実施し得る「特定看護師」(仮称、以下「仮称」は略)を提案したのです。
●患者の状態に応じた薬剤の選択・使用も
「特定看護師」が可能な行為として、厚生労働省では、次のようなものを例示しています。
【検査等】
・患者の重症度の評価や治療の効果判定等のための身体所見の把握や検査。
・動脈血ガス測定のための採血など、侵襲性の高い検査の実施。
・エコー、胸部単純X線撮影、CT、MRI等の実施時期の判断、読影の補助等。
ほか
【処置】
・人工呼吸器装着中の患者のウイニング、気管内挿管、抜管等。
・創部ドレーンの抜去等。
・褥瘡の壊死組織のデブリードマン等。
ほか
【患者の状態に応じた薬剤の選択・使用】
・疼痛、発熱、脱水、便通異常、不眠等への対症療法。
・副作用出現時や症状改善時の薬剤変更・中止。
●大学院修士課程修了ほかが要件に
前述のような行為をする「特定看護師」については、その安全性や質を担保するため、次の4項目のすべてを満たすことが要件となっています。また、一定期間ごと(例えば5年ごと)に認定の更新を行うことになります。
(1)看護師免許を保有していること。
(2)看護師としての一定期間以上の実務経験(例えば5年以上)を有すること。
(3)「特定看護師」の養成を目的とした課程として第三者機関が認定した大学院修士課程を修了したこと。
(4)修士課程修了後に第三者機関による知識・能力の確認・評価を受けたこと。
●課題と見通し
「特定看護師」の提案を受けて、「チーム医療の推進に関する検討会」ではさまざまな意見が出ましたが、まず、「特定看護師」についての試行、モデル事業を行い、あらためその制度化/法制化についての適否を検討する、ということで大筋で合意がなされました。
ただし、「特定看護師」に関しては、例えば次のような大きな課題が残されています。
第1は、現行の専門看護師/認定看護師との関係をどのように整理するかということです。また、2月18日の第10回検討会では、委員の間から、何らかの経過措置を設けてもよいのではないか、という発言もありました。
第2は、一定数の養成ができるのかということです。これについては同検討会の永井座長は「看護系の大学院修士課程の定員は約2,000人だが、みんなが『特定看護師』になるわけではない。新たに看護師免許取得者が年間5万人であり、どのような影響が出るか?」と、新たに論点を提起しました。実際、大学院修士課程を修了した看護師/専門看護師には「実践派」として病院で仕事をし続ける人たちのほか、大学教員などを目指す「理論派」も存在します。しかし、「特定看護師」は、あくまでも「実践派」であることが求められます。
第3は、「特定看護師」を制度化することによる実際の影響です。これについて、日本医師会を代表する委員からは、「特定看護師」を制度化すると、「特定看護師」のいない地域では、これまでは看護師が実施していたような医療ができなくなって、医療に支障を来すようになるのではないか、といった趣旨の問題提起もありました。
以上のように、「特定看護師」については検討課題がいくつも残されていますが、すでに大筋での合意はなされており、3月19日に予定されている第11回(最終回)同検討会で最終的に意見の集約ができるものとみられます。また、それは、看護師等の業務範囲の拡大に向けての大きな一歩となります。
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