生命を救う現場であると同時に患者さんとご家族の倫理的調整の役割を担う
救命救急センター 急性・重症患者看護専門看護師
渡海 菜央さん
当院の救命救急センターは、三次救急に加え、小児救急や母体搬送を含め、緊急性の高い患者さんを受け入れています。厳しい現場ですが、新人時代はプリセプターや先輩たちの指導とチェックパスに基づいた教育環境のもとで、成長できました。ICUの受けもちから始まり、初療や蘇生、緊急手術を学べることも特徴です。
入職後は救命救急センターに配属され、災害派遣チームDMATへの参加など多くの経験を積みました。患者さんの生命を救うことに加え、ご家族の意思決定支援や家族支援について学びたいと思い資格取得を目指しました。クリティカルケアにおける心理面に詳しい教授が地方の大学院にいたため、一度退職という選択をし、急性・重症患者看護専門看護師の資格を取得し、2018年に当院に再就職しました。
現在の活動は、患者さんやご家族の意思決定に対応するスタッフから相談を受けるなど、倫理的な調整も担っており、黒子的にサポートしています。昨年からは新人研修での講師、週1回の多職種による倫理カンファレンスに参加しています。今後は院内だけでなく院外にも活動の場を広げたいと思います。
現場では患者さんの状態を把握し、わずかな変化も見逃さず適切に介入することを心掛けています。これが自分の看護観にもつながっています。そして必ずしも回復される患者さんだけでないことも救命救急の現実です。ご家族にとって患者さんとの最期の時間をどう過ごすか、医療者が介入することも必要なケースもあります。医療者側の価値観を押しつけるのではなく、患者さんやご家族の思いにきちんと向き合うこと、希望することへの道筋を立てることも大事な役割だと考えています。
急性期看護は限られた時間のなかで患者さんの状態把握からアセスメントまで迅速に取り組む能力が求められ緊張の連続ですが、そこに携われる醍醐味があります。退室された患者さんの様子を知る機会は少ないのですが、挨拶されたり、リハビリをしている姿を見るときに、自分がかかわれた喜びにつながります。また、患者さんの生命を救うため、チームが一丸となって困難を乗り越える達成感を感じられることや、治療が優先される現場であっても、患者さんやご家族の価値観に沿って看護を提供できることが魅力だと感じています。
今後は、ACP(アドバンス・ケアプランニング)を考え、退院後の地域での生活を視野に入れ、患者さんを中心にご家族と医療チームが話し合う機会を設け支援していきたいと思います。