「看護とは生命力の消耗を最小にすること」を基盤として看護を提供
玉上 淳子さん
附属病院[本院] 副院長 看護部長
当院は東京都心部において高度先進医療を提供する特定機能病院としての役割を担っています。私たちはナイチンゲール看護の考えに基づき「看護とは生命力の消耗を最小にするよう生活過程を整えること」ととらえ、患者さんを一人の人間として尊重し、患者さん主体の看護を提供しています。相手の“持てる力"を信じて、その力をどう引き出せるか、そこに看護の本質があります。人間対人間のかかわりの中で、看護は発展していくと考えます。
未知のウイルスであったコロナ禍において、治療法や治療薬がないなか私たちは脅威を感じました。防護服着用や接触時間の短縮など、さまざまな感染対策を立て、社会から孤立した患者さんの生きる力や意欲を回復させていきました。まさに「生命力の消耗を最小にする」を実践していったのです。ナイチンゲールの教えが根底にあったことが、私たちを支えてくれたことを改めて実感しました。
大規模な急性期病院では、高度な知識・技術が求められますが、その中で患者さんを中心に置くことは忘れないようにしています。
看護職者像として目指すのは、「機を誤らず」「声なきに聞き」「形なきに見る」力を備えた看護実践者の育成です。患者さんのさまざまな状況を見逃さず、たとえ言葉にしなくても表情や態度で患者さんの思いをくみ取り、必要なケアを提供していくこと。それが、私たちが目指す看護であり、そうした看護を実践できる看護師を育成したいと考えています。看護は何をする職業かをクリニカルラダーの中で据え、ケーススタディを中心とした研修の中で培っています。
時代とともに看護学校の学習内容も変化し、訪問看護や家族看護など、新しいカリキュラムも導入されています。看護部では学生時代に何を体験しているかを把握し、新卒者への指導を行っています。最近は自己効力感が低い人が多く、臨床現場で計画通りに実践できずに心が折れて自信を失うケースも見られます。
自信がもてるまでには、経験を蓄積していくことが必要です。1年目は失敗することも権利であることを認識してください。うまくいかない場合は、次にどうすればいいか考え先輩たちの力を借りながら、チャレンジすることも必要です。皆さんが自分の成長を実感できるよう、私たちが必ずサポートしますので安心してください。
そして生き生きと働ける職場環境づくりを目指し、2004年から取り組んでいるのは、「FISH!
哲学」です。「仕事を楽しむ」ために自ら態度を選んで、元気に働ける風通しのいい職場がここにあります。私たちと一緒に患者さんによりよい看護を提供していきましょう。
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