初めてプライマリーとして関わった患者さんが心に残っています。その患者さんは腎不全で透析を行う必要がありましたが、自覚症状がないために透析に抵抗感を示していました。また、舌癌術後で話しにくく、もどかしさから怒り出してしまうこともありました。
　最初は戸惑うこともありましたが、患者さんの思いを聞きながら透析の説明をしたり、一緒に透析療法の様子を見学したりして、イメージを膨らませる働きかけをしました。それでも、残念ながら「薬や食事でどうにかならないの」と、患者さんの抵抗感は強いようでした。
　その後、入院治療の成果もあり、薬物、食事療法で無事に退院できることになりました。退院の日、無口だった患者さんが、私の名前を覚えてくださり、「Tさんが担当の日は嬉しかった。家に帰っても忘れないよ」と言ってくださいました。患者さんに寄り添って看護することの大切さを教わった貴重な経験です。